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横浜地方裁判所小田原支部 昭和62年(ワ)89号 判決 1989年9月19日

原告

佐藤澄雄

右訴訟代理人弁護士

中込光一

被告

日産車体株式会社

右代表者代表取締役

本田文彦

右訴訟代理人弁護士

浅岡省吾

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  原告が被告の社用車運転手の地位にあることを確認する。

2  被告は原告に対し一六三万〇八二五円及び昭和六二年三月から毎月二五日限り一三万〇〇七五円を支払え。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

4  2項につき仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  被告は、肩書地において日産自動車株式会社製自動車の車体製造を業とする従業員数七一六一名の会社である。

2  原告は、昭和四九年一〇月二二日、被告会社の「社用車・通勤バス運転手募集」との新聞広告に応募し、職種を社用車運転手と特定して労働契約を締結して被告会社に入社し、昭和六一年一月一四日迄運転手として勤務した。

3  被告は原告に対し、昭和六一年一月一四日、その担当業務を運転手からメール仕分け業務に変更する旨通知した(以下「本件業務変更」という)。

4  本件業務変更は以下の理由により無効である。

(1) 社用車運転手からメール仕分けへは異職種配転に該当し無効である。

(2) 本件業務変更は、原告の腰痛を原因とするところ、当時原告の健康状態は運転手業務に差し支えない状態であったから理由がない。

(3) また、社用車運転手は時間外労働があるのにメール仕分け業務はそれが全くない。かように労働者に経済的な不利益を与える業務変更は労働者の同意なくして許されない。

(4) 本件業務変更は、原告が交通事故の損害賠償請求に際し、被告の対応が保険会社寄りで不誠実であると非難したり、休業期間中の仮払金の被告の清算の仕方が不明朗な点を指摘したことの報復人事として行われたもので、人事権の濫用に当たる。

5  原告は被告に対し、昭和六一年三月三日付で社用車運転手にもどすよう申し入れたが、被告はこれに応じない。

6  被告の本件業務変更により原告は以下の損害を被った。

(1) 原告は被告から時間外労働・超過勤務手当として昭和六〇年四月分から同年六月分迄一か月平均一三万〇〇七五円の支払いを受けた。

被告が原告を昭和六一年三月に社用車運転手に復帰させれば、原告は従前どおり時間外労働に従事し、毎月一三万〇〇七五円の支払いを受けることができた。昭和六一年四月から昭和六二年二月分迄の合計は一四三万〇八二五円である。

(2) 原告は本件訴訟を提起するに当たり、原告訴訟代理人弁護士に委任し、費用として二〇万円支払う旨約した。

7  被告の原告に対する賃金の支払いは月末締め翌月二五日払いである。

8  よって、原告は被告に対し、原告の労働契約上の地位が被告の社用車運転手であることの確認を求めるとともに、債務不履行による損害賠償として一六三万〇八二五円及び昭和六二年三月から毎月二五日限り一三万〇〇七五円の支払いを求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1は概ね認める。

2  同2のうち、原告がその主張日時に被告会社に(準社員として)入社したこと、その後昭和六一年一月一四日迄運転業務担当であったことは認めるが、その余は否認する。なお、社用車運転手は、被告において社用で社有車両を運転する業務をいい、特定の職種を示す用語ではない。

3  同3は認める。但し、本件業務変更は昭和六一年一月二〇日発令、同月二七日実施にかかるものである。

4  同4の冒頭及び(1)は争う。

(2)のうち、本件業務変更が原告の腰痛を理由としたことは認めるが、その余は争う。

(3)の第一文は認める。第二文は争う。

(4)は否認し争う。

5  同5は認める。

6  同6は争う。

7  同7は認める。

8  同8は争う。

三  被告の主張

1  職種特約の不存在

(1) 原告は昭和四九年一〇月二二日被告に準社員として採用され、その六か月後の昭和五〇年四月一日付で正社員としての労働契約を締結したが、その際、

「就業場所 日産車体株式会社

所属 総務部庶務課(後に総務部総務課と改称)

その他の労働条件 就業規則および付属規程記載のとおり

将来の就業場所 業務の都合によって上記の就業場所以外の事業場に転勤させることがある

将来の職種 本人の素質、能力、技量等または業務の都合によって上記の職種以外のものに転換させることがある。」

との記載のある労働契約書を交わした。

(2) 被告の就業規則はその六条において、

「従業員の異動は次の場合に行う。従業員は、正当な理由がなければこれを拒むことができない。

<1> 職制または業務分掌を変更するとき

<2> 事業を拡張または縮小するとき

<3> 部分的人員不足または過剰が生じたとき

<4> 本人の能力、能率等によって異動を適当と認めるとき

<5> その他特別の事情があるとき」

と定めている。

(3) よって、原告は被告に対し、業務上必要な担当業務の変更を命じうる権能を与えたものであるから、原告の職種を運転手と特定して契約したものではない。

2  本件業務変更の必要性

本件業務変更は以下の経緯と必要性に基づくものである。

(1) 原告は、昭和五八年五月九日役員用乗用車を運転中追突事故(以下「第一事故」という)に遇い、頸部打撲挫傷等により昭和五九年三月一〇日迄治療を受けた。

そして、更に原告は昭和六〇年五月二四日自家用車にて帰宅途中接触事故(以下「第二事故」という)に遇い、右頭頂部打撲、腰椎捻挫等で同年一〇月二七日迄入院通院治療を受けて自宅療養をした。

(2) 原告は昭和六〇年九月三〇日、第一事故の任意保険の処理について保険会社営業所所長大滝博史と口論の挙げ句、同人に暴行を加え、現行犯逮捕された。

(3) 原告は被告に昭和六〇年一〇月二八日出勤したものの、医師の「普通勤務許可する」との診断にもかかわらず、運転をしないと言った。したがって被告は原告に他の者が運転する事業所間連絡バスの添乗をさせた。

また、原告は以後連日のように早退した。

(4) 被告は原告の前記各事故と事故後の経過その他原告の業務適格について検討して、原告に人の輸送を担当させるのは適当でないと判断し、総務部総務課内の人の補充を必要としていたメール室勤務とすることとした。

(5) なお、近時の自動車業界を取り巻く環境の厳しさに対処するため、被告は全社を挙げて合理化、経費節減に取り組み、乗用車運転手についても二一名から一七名に減員した。

すなわち、役員送迎乗用車の配車を減じて昭和六一年六月その運転手を一五名から一二名に減じ、通勤バス及び事業所間連絡バス運転手は六名から同年一月原告、九月一名の計二名を減じた。但し、一名は役員用送迎担当から通勤バス等運転手に担当替えした。

(6) メール室は、メール業務を担当する部署で、社内の郵便物や書類の仕分けと、自転車等を使っての集配業務とがある。原告については昭和六一年一月一三日被告総務課課長塙田欣司(以下「塙田」という)が原告に病状を聞いたところ、原告は「まだ腰が痛い、運転はやらない。」と述べたので、被告としては、原告が完治する迄メール仕分けのみを担当させるのが適当であると判断した。それゆえ、本件業務変更に当たり、原告を当面はメール仕分けを担当し、健康回復後は集配(社用車運転による)業務を行うものとした。

四  被告の主張に対する原告の認否及び反論

1  被告の主張1(1)(2)は認める。

(3)は争う。原告が被告の準社員に採用される際にはかかる文言の説明は全く無く、口頭で「ずっと社用車運転手としてやってもらう。」と原告が社用車運転手を続けることを説明強調され、異動については全く触れられなかった。よって、かかる書面の記載は関係がない。

2  同2(1)のうち、第一事故の治療期間を除いて認める。これは昭和六〇年五月迄通院治療した。

(2)は認める。

(3)のうち、原告が運転はしないと言い添乗のみしたことは否認する。実際に運転していた。その余は認める。

(4)は知らない。

(5)のうち、乗用車運転手が減員された(但し、昭和六二年以降)ことは認めるが、その余は知らない。

(6)の第一文は認める。第二文のうち、原告が運転はやらないと言ったことは否認し、その余は知らない。第三文は認める。

第三証拠関係(略)

理由

一  原告と被告との関係及び本件業務変更の存在

被告が肩書地等において日産自動車株式会社製自動車の車体製造等を業とする従業員約七〇〇〇名の会社であること、原告が昭和四九年一〇月二二日被告の準社員として採用され昭和五〇年四月一日付で正社員となったこと、以後昭和六一年一月一四日迄原告が被告の社用車運転業務担当であったこと、同日、被告が原告に対し担当業務を運転手からメール仕分け業務に変更する旨通知したことはいずれも当事者間に争いがない。

なお、(証拠略)によれば、本件業務変更は昭和六一年一月二〇日発令、同月二七日実施にかかるものであったことが認められ、これに反する証拠はない。

二  異職種配転の主張について

原告は被告に入社した際、職種を社用車運転手に限定するとの合意があったと主張し、原告本人もこれに沿う供述をするが、右供述は後記認定の事情に照らしてにわかに信用することができず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。

原告が被告の正社員に採用された際、被告の主張1(1)記載のとおりの労働契約書を交わしたこと、被告の就業規則中に被告の主張1(2)のとおりの条項があることは当事者間に争いがない。

そうすると、原告本人がいうようにこれらの条項につき何らの説明がなかったにせよ、原告と被告との間には一応被告に配転命令の権限を与えることの合意があると認められる。

しかし、右の合意により被告が全く無限定に原告を配転等させうるとまではいえず、その範囲は原告と被告との労働契約締結の事情、従来の慣行、本件業務変更における新旧職務の内容の差異等を総合的に判断し合理的と認められる範囲に限定されるものであるから、これについての検討は人事権濫用の主張に対する判断でなすこととする。

三  人事権濫用の主張について

原告の各主張は結局のところ人事権濫用の主張と解される。

1  職種について

前記争いない事実に、(証拠略)、原告本人尋問の結果によれば、以下の事実を認めることができ、これを覆すに足りる証拠はない。

(1)  原告は他社で守衛として約一一年勤務した後、昭和四九年一〇月被告の「社用車運転手募集」との新聞広告によりこれに応募し、被告の人事部雇用課で面接を受けた。原告はバス運転手を希望し、面接担当者との間で運転手業務を前提としての給与待遇の話が交わされた。

被告においては当時人手不足で月に数回準社員を募集していた。準社員は期間をほぼ六か月とする社員で、約六か月経過後は正社員に登用される道があり、原告はその期間バス運転手を務めた後、特段の支障なく翌五〇年四月に正社員となり、以後バス運転手、役員用乗用車運転手等一貫して運転手業務を担当した。

(2)  原告のいう社用車運転手は被告における職種コード表の現業職掌中の乗用車運転手の職種で、役員送迎用乗用車運転手、バス(通勤バス、事業所間連絡バス)運転手の二種があり、その職種コード番号は331である。また、乗用車運転手の出勤場所は運転詰所である。一方、メール室勤務者は、前記表の特務職掌中の雑作業の職種で、社内郵便物のメール仕分けと、社用車(ライトバン)や自転車等を使っての集配業務とがあり(メール室勤務者の業務内容については当事者間に争いがない。)、その職種コード番号は602である。

乗用車運転手とメール室勤務者との間には基本給の差異はない。しかし、業務の性格上乗用車運転手には時間外労働が多いため、その時間外労働賃金があるのに比し、メール室勤務には時間外労働はない(この事実も当事者間に争いがない。)。なお、両者はいずれも被告の総務部総務課に所属する。

(3)  原告以前の乗用車運転手からメール室勤務への配転例は、いずれも身体の不調等により運転手不適当と判断された本人の希望に基づくものであった。

右認定によれば、原告は被告において長年乗用車運転手として勤務しており、これと業務内容の大幅に異なるメール仕分けは狭義の職種としてみる限りにおいて、被告が全く自由に配転することのできる合理的な範囲内を若干超える疑いがある。

2  本件業務変更の必要性等

被告の主張2(1)ないし(3)の各事実は一部を除き当事者間にほぼ争いがない。

右争いない事実に、(証拠略)、原告本人尋問の結果(但し、認定に反する部分を除く。)に弁論の全趣旨を総合すると、本件の経緯につき、およそ以下の事実を認めることができ、原告本人尋問の結果のうち認定に反する部分は信用せず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

(1)  原告は昭和五八年五月九日の第一事故にて、頸部打撲挫傷、鞭打ち損傷により通院して療養した。受診医師は昭和五九年三月一〇日で治癒としたが、原告は同年四月中にも通院したため、任意保険の担当者が医師の治癒判定に沿った処理をすることに不満をもち、第二事故で療養中の昭和六〇年九月三〇日、保険会社の営業所所長大滝博史に対し暴行を加えて現行犯逮捕された。

(2)  昭和六〇年五月二四日原告は第二事故に遇い、同月二七日と同年六月一二日から同月一四日迄年休をとり、同月二一日から同年一〇月二七日迄右頭頂部打撲、腰椎捻挫、頸椎捻挫、右下肢不全麻痺等で入院、通院して病欠となった。

(3)  昭和六〇年一〇月二八日、原告は医師西村哲の「普通勤務許可する」との診断の下に被告に出社し、被告の産業医小川の診断も同様であった。

しかるに原告は、面接した当時の総務課長塙田に対し、腰が痛いと強調し、運転業務につくことに消極的であった。このため、塙田は運転業務は人間を乗せる仕事のため万一を慮り、原告には配車しないよう指示し、よって原告は運転業務はしなかった。

一か月後の昭和六〇年一一月二八日、塙田は原告に面接して様子を聞き、原告はまだ腰が痛いと言ったが、周囲の従業員への配慮もあって原告に対し、同僚運転手の事業所間連絡バス運転の際添乗することを指示した。原告は翌六一年一月八日迄添乗をし、その際運転手が椎野和男のとき原告自ら片道を運転したことがあったが、塙田には報告がされていなかった。

(4)  また、原告は通院治療のため、昭和六〇年一〇月には出社四日中三日早退、一一月は出社一八日中一四日早退(三日年休)、一二月は出社二〇日中一七日早退(一日年休)、翌六一年一月の一三日に至る迄は出社六日中五日早退という勤務状況であった。

(5)  原告は前記(2)の病欠中に、被告の給与仮払金制度のために支給額がマイナス計算となったことに疑問をもち、勤労課課長白石に質問したが、納得することができず、今日に至る迄仮払金制度に関して被告に不信の念を抱き続けている。なお、塙田は、原告の右の疑問を知らず、原告が前記添乗勤務の際何かわめいていたとの報告を受けたが、それが何についての不満であるかは知らなかった。

(6)  塙田は、昭和六一年一月八日原告と面接して病状を確認し、まだ腰痛があるとの返答を得た。

これらの状況に鑑み、塙田は、原告が腰痛を訴える限り原告に乗用車運転業務をさせることができず、かつ原告の二回の事故とその後の経過(とりわけその治療中に保険会社担当者と紛争状態となり暴行事件を起こすなど対人応接に問題があること)やバスに添乗中わめいていたことなどから、原告を人命を預かる乗用車運転手業務には不適格であると判断した。

(7)  ところで、折からの自動車業界は、円高の影響と、日米貿易摩擦の関係での対米自動車輸出の自主規制のために自動車輸出が大幅に減少し、被告においては、販売台数の五割が輸出でしかも北米が対象であったため打撃が大きく、社内の合理化、減量化を迫られる情勢であった。

ちなみに、被告の昭和六〇年度の生産台数は四五万四〇〇〇台であるが、翌六一年度は三七万七〇〇〇台、更に六二年度は三五万六〇〇〇台へと減少した。

これに対処するため、被告は大卒以外の新採用停止、臨時工制度の廃止、出向などを実施し、被告全社の従業員数は、昭和六〇年度七四四六名が、翌六一年度には六五八八名、六二年度には五五九二名へと減少した。

これにつれ、従業員寮も三か所から一か所となって、寮生を送迎する通勤バスは昭和六〇年の五台から翌六一年に四台、六二年に二台となり、六三年四月に全面廃止となった。

また、役員送迎用乗用車の配車を減じ、その運転担当者を昭和六一年六月一五名から一二名とし、かつ通勤バス及び事業所間連絡バス運転業務担当者は六名から同年一月一名(原告)、同年九月一名計二名を減じた。なお、役員送迎用乗用車運転手から一名通勤バス等運転手に担当替えしたため、乗用車運転手としては昭和六一年一月から同年九月迄の間に二一名から一七名に減員となった。

(9)  右の減員運転手の配転先は、メール室二名(原告を除く)、補給課二名及び販売店出向一名であった。

昭和六一年一月当時、メール室は配置人数が少なく補充を必要としていた。

(10)  塙田は本件業務変更を課長権限として行ったが、その際原告が運転手であったことに配慮し、原告の健康(腰痛)が回復すれば社用車を運転しての集配業務に就けることを付加した。

以上の認定に鑑みれば、原告の職種変更自体には若干問題はあるにせよ、被告が原告を元の乗用車運転手の業務に就かせておくことに差し支えがあると判断し、原告の健康管理上の理由と人事管理上及び被告の合理的運営の必要性とから本件業務変更を行なったことが認められ、更にかかる判断をしたことの根拠にも不合理な点はないことが認められる。

原告は、被告が仮払金について追及する原告を嫌悪し、報復として本件業務変更を行ったと主張し、原告本人もそのように述べるが、前記認定(5)に照らせばそのようなことは否定され、かかる主張は理由がない。

また、原告は、原告の交通事故の補償請求に際し、被告が保険会社寄りで不誠実であると原告が非難したことへの報復であるとも主張するが、そのような事実を認めるに足りる証拠はない。

なお、先の認定(10)によれば、本件業務変更には、原告の健康が回復後は、原告をメール室内の業務として社用車を運転する集配業務担当とすることが予め約束されており、(証拠略)、原告本人尋問の結果によれば、原告は昭和六一年二月二八日の段階で自ら健康を回復したとしていることが認められるが、(証拠略)によれば、当時症状固定したものの、腰痛等を残しての固定であることが認められ、その他(証拠略)に弁論の全趣旨を総合すれば、メール室内の配置として必ずしも円滑に担当替えができず、原告としても、そもそもメール室勤務自体が不満であるために、集配業務への変更を希望しなかったことが認められるのであって、今日に至る迄原告がメール仕分けに従事していることをもって、本件業務変更の不当な目的、動機を推測させることにもならないのである。

そうすると、原告の人事権濫用の主張は理由がないことが明らかである。

四  結論

以上検討したところによれば、その余の部分につき判断するまでもなく原告の請求は理由がないのでこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 元吉麗子 裁判官 東原清彦 裁判官 池本壽美子)

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